デリケートゾーンにはさまざまな種類のできものが生じます。
「セックスの際にパートナーに指摘されて性病を疑われてしまった」
「ニキビのようなものができていたのにいつの間にか治っていた」
などの経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。
今回はデリケートゾーンのできものについて、考えられる原因と正しい治療法について詳しくご紹介していきます。
パッと見るための目次
デリケートゾーンにできものができてしまう10の原因と治療法

できものの原因には、生理的な変化によるものもあれば、性病(性感染症)によるもの、性病以外の感染症によるもの、良性腫瘍や悪性腫瘍など、非常にさまざまな可能性が考えられます。
それぞれについて、原因やできものの特徴、治療法などを勉強していきましょう。
膣前庭乳頭症(ちつぜんていにゅうとうしょう)
膣前庭乳頭症は、前庭に小さなブツブツが出現する状態です。
前庭とは、小陰唇(ビラビラ)の内側を指し、膣や尿道が開口している部分にあたります。
膣前庭乳頭症は性病などの病気ではなく、生理的な変化として知られています。
原因には女性ホルモンや生理との関係が考えられています。
できものの特徴として、大きさは1mm程度で、1つ1つの大きさはある程度揃っていることが挙げられます。
また、色は周辺の正常な皮膚と同じような色を示します。
生理周期に合わせて大きさや数が増減することも特徴的です。
症状として、痛みやかゆみを伴うこともあります。
膣前庭乳頭症は病気ではないため、治療の必要はありません。
セックスによってパートナーにうつることもありません。
ただし、自己診断で膣前庭乳頭症と決めつけて放置してしまうのはおすすめできません。
デリケートゾーンに生じるできものの中には治療が必要なものも多数あるので、一度産婦人科あるいは皮膚科で受診して、きちんと診断してもらうとよいでしょう。
毛嚢炎(もうのうえん)、毛包炎(もうほうえん)
毛嚢炎(毛包炎)は、毛穴に生じる細菌感染症です。
毛を一度でもピンセットで抜いたことのある方はご存知かと思いますが、毛は皮膚の表面より数mm深い部分から生えており、かつその根元はやや太くなっています。
この毛の根元を覆っている皮膚の溝、つまり毛穴のことを「毛嚢(毛包)」と呼びます。
ここに黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの細菌が侵入して炎症が起こると、赤いニキビのような皮疹、あるいは中に白い膿が詰まった膿疱(のうほう)などが出現します。
原因となる菌はもともと皮膚に存在する常在菌ですが、不潔な状態が続いたり、免疫力を低下させるような薬(ステロイドなど)を使用している場合、カミソリ負けのような小さい傷がついている場合には、細菌が一気に増殖して炎症を起こします。
数が少ない場合や特に症状がない場合は、自然に治癒します。
毛嚢炎の原因菌はもともと誰もが持っている細菌であり、パートナーにうつることはありません。
一方、数が多い場合や痛みが強い場合には抗生物質を用いて治療します。
デリケートゾーンは不潔になりやすい部位であるため、特に清潔を心がけることが重要です。
バルトリン腺炎/バルトリン腺嚢胞(のうほう)
バルトリン腺とは、膣の入り口部から数cm奥、肛門側の左右に1つずつ存在する分泌腺です。
バルトリン腺からは粘液が分泌されており、これによってセックスの際にスムーズな挿入が可能になっています。
この腺の出入り口から大腸菌やブドウ球菌などの細菌が侵入し、炎症を起こしたものをバルトリン腺炎と呼びます。
炎症によって腺の出入り口が塞がると、分泌液が溜まって腺が拡張し、やがて袋状のできものに進展します。
これをバルトリン腺嚢胞と呼びます。
バルトリン腺嚢胞はゴルフボール、あるいはピンポン玉ほどの大きさまで腫れることがあります。
さらに、この嚢胞内に細菌感染が起こり、膿が溜まってしまう状態をバルトリン腺膿瘍(のうよう)と呼びます。
初期であれば自然に治癒することもありますが、感染が起こって強い炎症が生じている場合には、抗生物質や痛み止めを用いた薬物治療が行われます。
腫れが大きい場合には、嚢胞あるいは膿瘍を切り開いて中に溜まった分泌液や膿を排泄させる処置を行います。
再発防止のためにバルトリン腺を丸ごと取り除く方法もありますが、その場合には粘液の分泌機能を失くしてしまうことになるので、セックスがスムーズに行えなくなる可能性がある点に注意が必要です。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤は皮膚の下に生じるしこりであり、全身のどこにでも発生する可能性があります。
大きさは通常1~2cmほどですが、これより大きくなることもあります。
毛の生える部位に生じやすく、色は周囲の正常な皮膚と変わりません。
粉瘤の中身は垢です。
古くなった皮膚の細胞は通常、身体から剥がれ落ちていきますが、粉瘤では皮下に袋状の構造が作られてしまっています。
そして、この中に垢が溜まっていくことでしこりが形成されます。
粉瘤そのものには痛みやかゆみはありません。
しかし、そこに細菌感染などによる炎症が生じると、赤く腫れあがり、痛みを伴います。
治療は手術によって袋を取り除く摘出術が行われます。
小さいものであれば手術を急ぐものではありませんが、放置すると炎症をくり返したり、大きくなることもあるため、ある程度の大きさ以上になった場合、あるいは大きくなってしまう前に取ってしまう方が安心です。
外陰脂肪腫
脂肪腫とは皮下や筋肉内に生じる脂肪のかたまりです。
全身のどこにでも生じる可能性がありますが、特に脂肪の多い首や背中、あるいは分泌腺の多いデリケートゾーンなどには比較的よくみられます。
脂肪腫のほとんどは良性であり、がんのように命に関わるような危険性はそれほど高くありません。
脂肪腫のできものはやわらかいことが特徴的です。
痛みやかゆみなどの症状はなく、色も通常の皮膚と変わりません。
脂肪腫は特に悪いものではありませんが、一度できてしまうと自然に治ることはなく、治療としては手術によって取り除くしかありません。
小さく症状のないものであれば治療をする必要はありませんが、症状がある場合や気になる場合、大きさが増してきた場合などには手術が勧められることもあります。
尖圭(せんけい)コンジローマ
尖圭コンジローマは性病の1つです。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の6型、11型などの感染によって発症します。
潜伏期は2~3ヶ月と長く、感染後2~3ヶ月経過した後に、外陰部や肛門周囲などのデリケートゾーンにできものが出現します。
できものの特徴として、先端がとがるような鶏冠状、またはカリフラワー状の形をしており、かゆみを伴うことはありますが、痛みはありません。
また、できものからは悪臭を発する液体がにじむこともあります。
できものの数や大きさは、病気の進行に伴って増加していきます。
治療は冷凍療法や電気メス、レーザーによる切除術が行われます。
冷凍療法は、できものを凍結させて細胞を壊死させる方法です。
電気メスやレーザーは、できものを焼き切る治療法です。
この他、外用薬の塗布による治療が行われることもあります。
また、HPVは子宮頸がんの原因ウイルスとしても知られており、尖圭コンジローマと子宮頸がんを合併する可能性もあります。
がんの進展を防ぐためには、早期の診断と確実な治療が大切です。
性器ヘルペス
性器ヘルペスも性病の1つです。
単純ヘルペスウイルス(HSV)の1型、2型の感染によって発症します。
潜伏期は2~7日で、外陰部に痛みを伴う水疱(水ぶくれ)として発症します。
水疱は左右対称に多発し、また水疱が破れると潰瘍となって痛みが増強します。
痛みのために歩けなくなる例や排尿が苦痛になる例もしばしば報告されています。
一度発症すると、2~4週間で症状は自然に治りますが、HPVは神経の中に潜み続けます。
そして、体調不良やストレス、疲労時など免疫力が低下した際に、くり返し再発します。
治療はアシクロビル(抗ウイルス薬)を用いる薬物療法が行われます。
HPVは一度感染してしまうと、薬を使用しても完全に排除することは難しいものの、治療によって症状の程度が抑えられたり、治るまでの時間を短縮させることが可能になります。
梅毒
梅毒も性病の1つです。
梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の感染によって生じます。
梅毒は1期~4期の4つの病期に分かれており、初期ではデリケートゾーンのみにできものが生じますが、進行すると全身に症状が現れます。
第1期は、感染後3週間の潜伏期を経て、デリケートゾーンに硬い丘疹(きゅうしん:皮膚の一部が盛り上がるような皮疹)が生じます。
この丘疹は徐々にただれて潰瘍となりますが、痛みやかゆみは伴わず、3週間ほどで自然に消退していきます。
ただし、これは自然に完治したわけではなく、細菌は潜伏を続けてじわじわと増殖していきます。
第2期は感染から3ヶ月後に訪れます。
増殖した梅毒トレポネーマが全身に広がり、デリケートゾーンだけでなく顔や手のひら、お腹、背中など全身に5mm~10mm大の赤い丘疹が多発します。
第2期でも皮疹の出現と消退をくり返しながら、自然完治はせずに進行していきます。
第3期は感染後3~10年までの時期です。
数cm大の硬いしこりが全身に出現します。
第4期ではもう皮疹は出現せず、心臓や血管、神経などが障害され、心疾患や神経障害に発展します。
治療は、抗生物質(ペニシリン)を用いる薬物療法が行われます。
現在では治療の進歩により、3期以降まで進行することはほとんどありません。
梅毒のできものは自然に消えてしまい、かゆみや痛みも伴いませんが、「放っておいたら治った」と楽観視せずに確実に治療することが重要です。
外陰がん
デリケートゾーンに生じるがんです。
多くは大陰唇(足の付け根から割れ目までのふっくらしている部分)に生じますが、小陰唇や陰核(クリトリス)にみられることもあります。
初期症状はほとんどなく、進行につれてしこりやかゆみ、熱感、痛み、出血、色の変化(黒、茶、赤、白)などがみられるようになります。
原因にはHPVや喫煙が関与しているといわれています。
患者さんは60~70代に多いものの、近年では40代の患者さんも増えており、若いうちから注意が必要ながんの1つです。
治療は、初期のものであれば腫瘍のみの切除で治療可能ですが、進行してしまったものに対しては子宮や膣、膀胱なども併せて摘出する必要があります。
化学療法や放射線療法が行われることもあります。
尿道カルンクル
尿道の出口付近に生じる良性腫瘍です。
大きさは小豆ほど、大きいものであっても大豆ほどで、赤くやわらかいできものが生じます。
がんではないので、悪いものではありませんが、やわらかく傷つきやすいため、痛みや出血などの症状を認めます。
トイレットペーパーでデリケートゾーンを拭う際に血がついたり、あるいは尿中に血が混ざることもあります。
原因としては、便秘や多産などが考えられており、患者さんは中高年に多いことが知られています。
小さく症状のないものに対しては特に治療は必要ありませんが、症状が強い場合には外科的な切除が行われます。
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まとめ
デリケートゾーンのできものには、生理的な変化や性病によるもの、良性腫瘍やがんなどさまざまな原因が関与しています。
全く問題のないものに対してパートナーから性病を疑われてしまうこともあれば、放置していたものが実は進行性のがんだったということもあり得ます。
デリケートゾーンのできものに気付いたら、まずは産婦人科や皮膚科に受診して、正しい診断をつけてもらえると安心ですね。